確定申告の未仕訳を、1件ずつ直していました。1件あたり30〜40秒。残り140件なので、単純計算で1時間半かかります。

その途中で手が止まりました。これ、来年も同じことをやるのでは?

この記事は、そこから先に何をしたかの話です。前回は仕事を4つの層に分けましたが、今回は順番の話になります。

① フェーズ1 代行 ― 同じ手順を、AIにやらせる

今までのやり方をそのままAIに渡す段階です。速いですし、効果もちゃんと出ます。私も最初はここから入りました。

ただ、終わったあとに残るのは、片付いた作業だけなんですよね。来年また同じ状態になって、もう一度同じ依頼をすることになります。

フェーズ1が悪い、という話ではないです。

入口としてはこれが正しいと思います。問題は、ここを出口だと思ってしまうことです。

「AIは使ってるんだけど仕事は減ってない」という感覚は、だいたいここで止まっているときに出ます。

この話は「ChatGPTは使えるのに、仕事が減らない」にも書きました。

② フェーズ2 可視化 ― 自分たちのやり方を、数えさせる

ここでAIの使い道が変わります。作業ではなく、集計をさせる段階です。

去年の仕訳1,331件を全部読ませて、摘要ごとにどの科目を使ったかを数えました。出てくるのは処理結果ではなく、一覧表です。

ENEOSは去年18件すべて車両費。Amazonの購入品は48件が消耗品費。APPLE COM BILLは17件が通信費。

1,331件を人が数えるのは、正直やる気になりません。量を数える仕事は、AIが一番強いところです。

そして、ここで手に入るものが大事でした。今まで誰も言葉にしていなかった、自分の会社の決まりごとです。

③ フェーズ3 ルール化 ― 見つけた基準を、AIの外に出す

会計ソフトに「自動仕訳ルール」という機能がありました。この文字が入っていたらこの科目、と登録しておく仕組みです。

前のフェーズで出た一覧をもとに、94件のルールを作って取り込みました。

取り込んだ瞬間、140件の科目が正しく埋まりました。未仕訳は140件から55件になっています。

ここが一番大事なところだと思っています。

このルールを動かしているのは、AIではありません。

会計ソフト自身です。AIがやったのは、ルールを見つけるところまで。実行は、もっと安くて確実なものに渡しました。

そしてこのルールは、来年も効き続けます。

来年の私は、この作業をやらなくていい。「毎回AIに頼む」状態から「AIがいなくても回る」状態へ。ここが分かれ目でした。

④ フェーズ4 例外運用 ― 残ったものだけ、人が見る

ルールで埋まらなかった55件が残りました。ここは人が見ます。

例外はゼロになりません。

ゼロにしようとすると、ルールがどんどん複雑になって、来年の自分が読めなくなります。それは仕組みとしては失敗です。

正しい姿は、例外を消すことではなく、減った例外に人の時間を集中させることでした。

前回書いた「愛宕交通ってタクシーだよね」が要る判断も、この55件の中にあります。449件を全部人が見ていたら、そこに頭を使う余裕はありません。

効果は「今年」ではなく「来年」に出ます

449件を片付けたのは、今年だけの効果です。94件のルールは、毎年効きます。

物差しはひとつでよさそうでした。

その作業、来年も発生しますか?

  • 発生しない → フェーズ1で十分です。無理にルール化しない
  • 毎年(毎月・毎週)発生する → フェーズ3まで行く価値があります

ついでの話をひとつ。経費を摘要ごとに集計していたら、Amazonプライムの会費が月600円と年5,900円で二重に引かれていました。

アカウントが2つあったんです。カード払いのサブスクはよくあることだと思います。

年7,200円。額は小さいですが、解約したので来年以降もずっと効きます。集計はAI、確認と解約は人間でした。

つまずくのは、フェーズ1と2のあいだ

フェーズ1は、頼めば進みます。フェーズ2に進むには「今のやり方を数える」という、ちょっと面倒な一手間が要ります。

進むきっかけは、たいてい手が止まった瞬間でした。「これ、来年もやるのでは?」と思ったら、そこがフェーズ2の入口だと思います。

なお「小さな会社のAX、最初の一歩」でも3つの段階を書いていますが、あちらは会社全体がどう進むかの話です。

今回はそのうち第2段階(業務をひとつ組み込む)の中身を、もう一段開けた話になります。

まとめ

  • フェーズ1(代行)で止まると、来年も同じ依頼をすることになります
  • フェーズ2(可視化)で、自分たちの決まりごとが初めて言葉になります
  • フェーズ3(ルール化)で、実行をAIの外に出します。成果が来年に効き始めるのはここからです
  • フェーズ4(例外運用)で、例外はゼロにしません。人の時間をそこに集中させます

「うちの場合、どこにルールが埋まってるんだろう」と思ったら

私がシステム開発でやっているのは、だいたいフェーズ3の設計です。

ただ、どこにルールが埋まっているかは、その業務をやっている人しか知りません。掛け合わせないと作れないので、まず話を聞かせてもらうところからになります。

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この記事は、AIツールを実際の業務に使ってみた記録です。筆者は税理士ではありません。
記事中の勘定科目の扱いは筆者の判断によるもので、正しい処理はお近くの税理士にご確認ください。
個別の税務相談にはお答えできません。AI活用のご相談のみ承ります。