「IT導入補助金なら聞いたことある」という方、正解です。
その補助金が今年度からデジタル化・AI導入補助金という名前に変わりました。
名前が変わっただけではなく、AIツールが正面から補助対象になった、中小企業にとってかなり実用的な変化です。

国の方針がお金の形になった

骨太の方針2026の記事で「国がAX(AIトランスフォーメーション)を国策にした」という話をしましたが、その方針がお金の形になったのが、この補助金だと考えると分かりやすいです。

このシリーズでは、この補助金を全10回くらいに分けて掘り下げていきます。第1回は制度の全体像です。

一言でいうと、どんな補助金?

会計ソフトや予約システムなどのITツール導入費の半分前後を、国が負担してくれる補助金です。
数ある補助金の中でも、金額の桁が現実的(数十万〜数百万円)で、締切が1〜2か月ごとに通年で回ってくるため、中小企業が最初に検討すべき定番の補助金と言われてきました。

対象は中小企業・小規模事業者・個人事業主。飲食店、小売店、建設業、士業など、ほとんどの業種が使えます。

5つの申請枠 ― 自分の会社はどれ?

  1. 通常枠
    いちばん基本の枠。補助率1/2(最低賃金近傍の事業者は2/3)、補助額は5万円〜最大450万円。会計・受発注・予約管理などのソフト導入に
  2. インボイス枠(インボイス対応類型)
    会計・受発注・決済ソフトなら補助率3/4(小規模事業者は4/5。ソフト50万円以下の部分)と手厚く、パソコンやレジなどのハードも対象(ハードは1/2)。
    上限350万円
  3. インボイス枠(電子取引類型)
    取引先との受発注を電子化する場合。中小企業は補助率2/3
  4. セキュリティ対策推進枠
    サイバー攻撃対策のサービス利用料。上限150万円
  5. 複数者連携枠
    商店街や組合など、複数の事業者がまとまって申請する枠。上限3,000万円

どの枠を使う?の分岐図。ソフトだけ入れたいなら通常枠(補助率1/2・最大450万円)、レジやパソコンも欲しいならインボイス枠(補助率3/4・機器もOK)、商店街や組合でまとめてなら複数者連携枠(最大3,000万円)

迷ったら「通常枠か、レジ・パソコンも欲しいならインボイス枠」と覚えておけば大体合っています。

名称変更で何が変わった? ポイント3つ

① AIツールが「正面から」対象になった

これが最大の変化です。
ツール検索でAI機能付きのツールを絞り込めるようになり、生成AIを使ったツールが補助対象として明確化されました。
議事録の自動作成、問い合わせ対応のAI化、AI搭載の会計ソフトなど、「AIで業務を楽にする」投資に国のお金が使えるようになっています。

② 賃上げ要件が強くなった

補助額150万円以上を申請する場合、賃上げの計画が必須になりました。
会社の中の最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上にする必要があります。
「補助金をもらって終わり」ではなく「浮いたお金と時間を人に還元してね」という国からのメッセージです。

③ 2回目以降の利用はハードルが上がった

過去に採択されたことがある会社は、給与総額の伸びに関する要件が追加されました。
初めて使う会社が有利な設計になっているので、まだ使ったことがない会社こそチャンスです。

旧IT導入補助金からの変化。AIツール、賃上げ要件、2回目以降の3点比較

意外と知られていない大事な仕組み ― 「カタログ方式」

この補助金、実は好きなツールを自由に買えるわけではありません
事務局に登録された「IT導入支援事業者」が、あらかじめ登録したITツールの中から選ぶ、いわばカタログ方式です。
申請も自分一人ではなく、そのIT導入支援事業者と共同で行います。

ここは正直にお伝えします。
この仕組みのため、完全オーダーメイドの自社専用アプリ開発は、この補助金の対象にはなりにくいです(登録済みパッケージが対象のため)。
うちで作っているような一品もののAIアプリは、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金など別の制度が候補になります。
「既製ツールで足りる部分はこの補助金で安く導入し、足りない部分だけオーダーで作る」という組み合わせが、一番賢いお金の使い方です。

補助金の対象になりやすいもの・なりにくいもの。登録済みITツールは対象、完全オーダーメイド開発は対象外

締切は8月25日 ― 今年はこれが最後

今年度は3月30日から申請受付が始まっていて、締切は2026年8月25日(火)17時、4次締切・全枠共通です。
今年は4次締切制になっていて、この8月25日が2026年の最終締切です。
最新の情報は公式サイトの事業スケジュールで確認してください。

「間に合うの?」と思った方、準備物には取得に2週間かかるものがあります。詳しくは第2回・申請の流れ編へ。

まとめ

  • IT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」に衣替え。AIツールが正面から補助対象に
  • 基本は通常枠(1/2補助・最大450万円)。レジやPCも欲しいならインボイス枠が手厚い
  • 登録ツールから選ぶ「カタログ方式」。オーダーメイド開発は別の補助金の出番
  • 締切は8月25日で、今年はこれが最後。準備には2週間モノがあるので早めに動く

今後このシリーズでは、2025年までの旧IT導入補助金の実例をもとに、飲食店・建設業・小売店など業種別の活用例を順番に紹介していきます。


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